僕自身、何故こんなにもサワードウブレッドを焼く事にハマったのだろうと、不思議に思います。これまでの、人生で趣味と呼べそうなモノは何もなありませんでした。あえて言うのなら、仕事が趣味だと言えるかもしれません。
パンの歴史はとても古く、約14400年も前の化石化したパンがヨルダンで発掘されている程です。さらに、紀元前3700年~3600年ごろには、既に人為的に発酵させてから焼いたパンを食べていたそうです。石で挽いて粉状にした麦を煮て、粥状にしたものを、数日放置して発酵したもの(サワードウ)を焼いていたようです。人類は5千年以上に渡ってサワードウブレッドを食べているのです。
酵母を単一培養した物をイーストとしてパンを焼くようになったのは、パンの歴史から見ればごく最近の事で19世紀以降の事です。早く、効率良く、そして均一の質のパンを作るのに必要不可欠なイースト。まさに、工業化、産業化、大量生産大量消費の産物と言えるのではないでしょうか。
現代の都市生活に足りないのはプロセスではないかと思います。スイッチをパチっとやれば明かりがついて、蛇口を捻れば水が出てきて、コンロ使えばすぐに火が付く。 極め付けは、スマホでポチッとすれば明日には欲しいものが家に届く。 入り口と出口が近接化し過ぎて、プロセスが不可視化されてしまいました。これが、現代人の病の根っこな気がするのです。 僕にとって料理をしたり、サワードウブレッドを焼くのは、メディテーションであり、プロセスを取り戻す行為なのです。
ホームベイカリーでは、このプロセスが取り戻せません。 小麦粉に水を加えて、生地が発酵して膨らんでいく、この魔術のような不思議を、手に触れ、匂いを嗅ぎ実感することが出来る。発酵とは何か、見えるようで見えない、この瀬戸際のプロセスをサワードウブレッドは存分に楽しむ事が出来るのです。
皆さんも是非、サワードウブレッドに挑戦してみてください。
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